W.jpg

 

2010年07月14日

インド・ネパール@

DSC_1078.JPG
クローゼットを整理していたら、大学2年生の頃、2ヶ月弱インド・ネパールをぶらぶら彷徨っていたときの日記と沢山の写真たちが出てきました。

僕の感性が鈍いからか、よく言われるような
「インドに行って人生観変わった」なんてことは全くありませんでした。
そもそも数ヶ月旅行したぐらいでその国のことをわかるわけないですしね。ですが、日本にいたらきっと出会うことのないような日本人と出会い・いろんな話をしたことや、インドの人々の暮らしぶりを見られたことは、星燈社をはじめる上での大きな礎になっているなーとは感じます。

そんなわけで、僕の記憶がこれ以上衰えないうちに「星燈社ができるまで」という意味を込めて不定期連載旅日記「インド・ネパール」を書いてみようかと思います。
どうぞよろしくお付き合い下さいませ。


海外旅行のガイドブックに、「地球の歩き方」というとても有名なシリーズがあります。
大学生協の「地球の歩き方」売り上げランキングといえば
「アメリカ」「イタリア」「フランス」「ヨーロッパ周遊」なんかが上位を占めるのが普通なのですが、僕の通っていた大学では何故か売り上げナンバーワンに大体いつも「インド」が君臨していました。それだけでもかなり異様な光景。

しかしそれどころか「まーまずはインドに行くのが基本でしょ」というような変な雰囲気すらあったのでした。
たぶん今も依然としてあの雰囲気は健在なんでしょうけど、インドへ行くことが一体何の基本になるんでしょうね。

と言いつつ僕も例に漏れず、そのなんだかわからない雰囲気に染まり・外国を見聞しないといけないと何かに追い立てられ・焦り・気がつけば地球の歩き方「インド」を手に取っていたのでした。
そしてあれは確か8月上旬、父からもらった銀塩カメラ「Nikomat EL」と沢山のフィルム、それといくらかの現金を持ってインドを目指しました。

ちなみに荷物の軽量化を図るために、何を思ったか真っ先に洋服を減らし、着替えを一着しか持って行かず非常に後悔したのはもっとあとのお話。
s58010004.jpg
成田空港を離れ

s58010006.jpg
乗ったのはエア・インディア

s58010008.jpg
気がついたら日本を遠く離れ
s58010010.jpg
雲の上。


飛行機に乗っている時間は8時間ぐらいあるのですが、僕はずっと「地球の歩き方」を読んでいました。
というのも、インド最初の難関は「空港に降り立ってからその日の宿にたどり着くまで」だそうで、「地球の歩き方 インド」の最初の80ページぐらいは無事に空港から市内に行くまでのハウ・ツーに割かれているのです。
もはや地球の歩き方じゃなくて「インドの入り方」。
具体的にどういうことかというと、多くの旅行者は空港から市内に行くまでの間に騙されるパターンが多いそうで、たとえば

@高額ツアーコース
空港でタクシーを借りる→目的の宿まで行ってくれと頼む→タクシーの運転手に「ツアーを組まないとインド旅行は大変だ!」と唆される→宿には行かず、タクシーでひたすら高額ツアー(10万円ぐらい)を組むまで悪徳ツアー会社をハシゴさせられる→スッテンテン

もしくは

Aマリファナ・偽警察コース
空港でタクシーを借りる→目的の宿まで行ってくれと頼む→タクシーの運転手に親しげに「インドに来たならまず大麻をやらなくては!!」と唆される→仲良く大麻を吸っているところで偽警察が現れる→「有り金全部払ったら見逃してやる」と脅される→スッテンテン

または

B強盗コース
空港でタクシーを借りる→目的の宿まで行ってくれと頼む→人気のないところでいきなりタクシーが止まる→タクシーの運転手に「金を出せ」と脅される→スッテンテン

と、そんな風にいずれにしても旅の始まりからスッテンテンにされる可能性が非常に高いらしい、とのこと。
「いやそんな怖いことはありえないでしょー!」
と思われるかもしれないんですが、@の「高額ツアーコース」はみんな最後に「バラナシ」という街が終着になるようで、のちに僕はバラナシの街で、沢山のスッテンテン日本人に会いました。

特に「帰国まであと一週間あるのに全財産1000円しかないんですよ…宿泊費込みで」と話している青年と会ったときにはさすがにバナナを買ってあげました。


そんなわけで恐れをなしつつ
s58010012.jpg
インドの玄関口、首都デリーの
「インディラ・ガンディー国際空港」に到着。

「あらかじめ日本でホテルの予約をし、ホテルから迎えが来ている日本人をつかまえて、迎えの車に便乗する」名づけて「コバンザメ大作戦」によって無事にデリー市内へ到着した僕は、貧乏旅行者には有名な「パハール・ガンジ」という通りに降ろしてもらいました。

パハール・ガンジの通りの両脇には、所狭しとバックパッカー目当ての土産物屋や真っ黒な油でサモサを揚げている屋台、安宿が軒を連ねています。

道端に座ってチャイを飲んでいるおじさん達や寝転んでいる牛を眺めながら歩いていると、インド人の兄ちゃんが英語で話しかけてきました。
「やあ!きみ日本人?」
「うんそうだよー」
「僕は英語を勉強しているんだ!さあ英語を教えてよ!」
「いや…英語話したいならアメリカ人に話しかけなよ」
「ハハハ!さあ英語を話そうよ!」
「いや…今宿探しに忙しいからいいよ。」
「じゃあ僕が安い宿に案内してあげるよ!」
「あれ?英語の勉強は?」
「ハハハ!カモン!」
「カモンって…宿は自分で探すからいいよ」
「そう…じゃあマリファナ買わない?安くするよ?」

なんで自称・英語の学生が安宿の勧誘したりマリファナを売るのかよくわかりませんが、とにかく追い払い

宿を見つけました。
先のことを考えてエアコンなしの
220ルピー(1ルピー3円なので、660円ぐらい)の部屋。
s58010016.jpg
はやる気持ちを抑えてバックパックを部屋に置き

夜のデリーの街へ。
ひとりでインド・チャイを飲んでいると「そうかインドに着いたのか」とやっと実感が沸いてきました。が、そんな感傷も長く続かず「写真撮ってくれ!」インド人青年にもみくちゃにされ、仕方ないから写真を撮ってあげることに。
s58010014.jpg
かっこいいつもり

s58010015.jpg
床屋の彼に「インドまでに写真送ってくれ!!」と言われていたのを今思い出しました。ごめん!これで勘弁してね!
ところで何で床屋なのにバンダナ巻いちゃったんでしょうね。


s58010017.jpg
翌朝早く起き、
チャイの屋台へと足を伸ばしました。

s58010018.jpg
なぜかキメ顔が真顔のインドの人たち。
チャイ持って真顔なのはどこか異様ですね。

s58010019.jpg
実は2日目の朝、「コバンザメ大作戦」で空港から街まで行くタクシーに僕を相乗りさせてくれた日本人と「明日一緒に行動しよう」と待ち合わせをしていたのでした。


s58010020.jpg

ツインルームに泊まれば宿代も安上がり。見たところどうやら悪い人じゃなさそうだし、年の頃も僕と同じぐらいのよう。
待ち合わせ場所に来た彼に、気になって歳を聞いてみた。
「今おいくつですか?」
「僕?…34」
「34!」
若い!どう見ても20代前半。
「しかも子持ちで」
「子持ち!」
「でも離れて暮らしてるんだよ」
「まさか!」
何やら色々と複雑な事情が。人は見た目によりませんね。

「実は今回の旅は、インドで自分を見つめ直そうと思って、思い切って仕事を辞めてやって来たのさ…」
「そうだったんですか…!」

沢木耕太郎の「深夜特急」に憧れ、仕事を辞めて自分の人生を見つける長旅に出る人たちは、いまだに結構多いのです。
早速そういう人種に出会ったかーと思いつつ、宿にチェックインして彼の荷物をしげしげと見ると、
そういえばかなり大きなバックパックを背負っています。
たかが1、2ヶ月の旅の僕とは旅の重さも長さも全然違うんだろうな。
「そんな大きな荷物なら、さぞ長旅なさるんでしょうね…!」
「いや2週間」
「短い!じゃあなんですかその大荷物」
「これ?見るかい?」
と言うや否やバックパックから出るわ出るわ、不要な荷物。

「まず、インドの食べ物が口に合わなかったときのためにね、
14日分のカロリーメイト。朝は我慢して昼・晩の28箱。」
「はあ…」

「それに、インドの子たちはペンあげたら喜ぶって話を聞いたから、100円均一で沢山買ってきたペン。」
出てきたのは100本を超えるんじゃないかというペンの束。
「そんな話いったいどこで聞いたんですか…」

と、僕が呆れてベッドに寝転ぼうとすると
「あ!山本くんちょっと待った!」
彼がバックパックから取り出したのは数種類の殺虫剤。

それを颯爽と両手に構え、僕のベッドに向けて噴射。
まさに殺虫剤を持ったスティーブン・セガール。

「プシューーーー」

「さあ、これでダニは退治したから大丈夫だよ…」
「はあ…」
さらにバックパックから、出てきたのはひときわ大きな包み。

「あれ、その大きい包みはなんですか?」
「これ…?紙オムツ」
「え?!オムツ!?」

「だって山本くん、考えてもみてごらん。
インドの夜行列車に乗っているときに、急にお腹が痛くなったらどうする?きみは荷物を置いてお手洗いに行くのか?
そしたら荷物が盗まれるじゃないか。
そこでこの、紙オムツの出番さ!」

「でも…盗まれるって言ってもカロリーメイトとペンしか入ってないじゃないですか」
「まあ、それはそうなんだけどね…」

インドに来て、まず最初の困難は空港で彼と出会ってしまったことかもしれない。
そんな心の片隅に浮かんだ不安を振り払いつつ「ジャマー・マスジット」という遺跡を見に出掛けることに。

宿を出ると、早速物乞いの子供が僕らを見つけて駆け寄り、アルミのコップを差し出してきました。
コップの中にはいくつかのルピー硬貨。
そして哀れげな顔をして「ワン・ルピー」と一言。

これが物乞いか、どうしたものかなーと思っていると、
同行の紙オムツの彼(34)が何か思い付いたように自分のバッグを開け、取り出したるは100円均一のペン束。
それをすかさず少年のアルミコップに投入。
「!?」「!?」
目を丸くして彼を見つめる僕と物乞いの少年。
少年のアルミコップがペン立ての様相を呈しています。

そんな呆れ顔の僕と少年を見て
「ペン、欲しいかなと思って…」
「いや…すごい欲しくなさそうなそうな顔してますよ。」
それから少年は丁寧にペンを返却したあと、もう一度
「ワン・ルピー!」
やっぱりこれから先が思いやられそうです。
そして遺跡を目指して猛暑の中、デリーの街を歩いていると

s58010025.jpg
牛だ!

s58010026.jpg
よく見たら牛が黒・茶・白のきれいなコントラストで整列。暑いのと先が思いやられるのでくじけそうな中、なんだか嬉しくなった瞬間でした。


【インド・ネパールA】へ続く
posted by 星燈社 at 21:58|